Mitumeru1103

言わ猿じゃ 寂しい日もあるしゃべりたい

うすらぼんやり

お題「思い出の食べ物はありますか?」

9歳で父は家を出て行った

 

直前にたった一度のサイクリング

 

父が見つけてくれたのは

手のひらサイズの繭型の

つるっと紫あけびの実

 

自転車のかごに大切に

お家に帰って食べようと

 

そしたら

自転車の揺れのせい

熟れたあけびは開いてしまい

中身が落ちて無かったの

 

9歳だった私には

まわらぬ知恵のいきさつで、、、

 

 

 

秋の東北

肘折温泉

旅館の前にたつ市で

あの懐かしい楕円体

紫色のつるっとが

笊に並んで待っていた

半世紀後の再会に

 

よう、懐かしい

あなたは中身付きなのね

 

しめたと買って旅館に帰り

どれどれお味はどうなのよ

 

ぷにゅぷにゅゼリーの半透明

中に透けてる黒い種

 

口の中には曖昧な

甘さが少し広がった

食べるというより

味わうだけの

口中さまようぷにゅぷにゅは

 

 父の記憶に似た様な

 

 曖昧模糊な味だった